2024年、元日の大地震と9月の豪雨により、甚大な被害を受けた能登半島。 2024年度のコンテストでは、「少しでも能登の人々を元気づけたい」と、複数のチームから“復興への願いを込めた能登の郷土料理”での応募がありました。
そして現在(2025年7月)、珠洲市行政との連携のもと、コンテスト応募チームが主体となって、地域の皆さんと一緒に応募レシピの郷土料理を作り、共に食べ、復興への想いを分かち合う場をつくろうと、取り組みが進められています。
スローフード・ラボ+
京都栄養医療専門学校 教員チーム
アラフォー専門学生!
華学園栄養専門学校
管理栄養士科 4年(2024年度当時)
珠洲市健康増進センター
所長の三上さん
管理栄養士の宮根さん
最初は「何ができるんだろう?」と手探り状態だったので、お互いにコミュニケーションを深めながら、どんな取り組みができそうか探っていきました。
そんな中、「スローフードラボ+」チームを率いる京都栄養医療専門学校の石伏先生が、発災直後に日本栄養士会の災害支援チーム「JDA-DAT」のメンバーとして、珠洲市で活動されていたことがわかりました。そしてそのとき、珠洲市の管理栄養士・宮根さんと連携されていたということでした。このご縁を活かして、「まずは珠洲市の住民の皆さんとの共食・コミュニケーションの場として料理教室を開催しよう!」ということになりました。
そして2025年3月、珠洲市健康増進センターの所長の三上さんと宮根さん、そして2チームのメンバーが集まって、応募レシピの試作や試食、打ち合わせを行いました。そのときの様子を、弊協会が取材しましたので、ご紹介します!
加賀レンコンを用い、手際よく調理を進める「アラフォー専門学生!」(2024年当時のチーム名)チーム。
「珠洲市の方々に作る楽しさを伝えたい」と、何よりチームの皆さん自身がとても楽しそうに調理する姿が印象的でした!
伝統的な作り方では、れんこんはおろし器ですりおろしますが、応募チームのレシピではフードプロセッサーを使用。そして、つなぎには本来、卵白・片栗粉・塩を使用しますが、なんとこの3つをはんぺんで代用します。
「手軽に作っていただけるように」というチームの皆さんの想いが詰まった工夫です。
まず、はんぺんとレンコンを一緒にフードプロセッサーにかけます。次に、たらの切り身にそれをのせ、丸く整えて、電子レンジで蒸します。器によそって、熱々のとろみ餡をかければ出来上がりです。
続いて、京都栄養医療専門学校の教員チーム「スローフードラボ+」チームの応募レシピ「あいまぜ」を作ります。「うち豆」(写真)という、北陸地方特産の大豆製品を用います。
能登の郷土料理を理解するために伝統的な作り方を調べて、調理工程を忠実に再現したというチームの皆さん。
実は、「スローフードラボ+」チームは都合によりオンラインでの参加となったため、「あいまぜ」の調理はチームに代わって弊協会が担当しました。 オンラインでチームより随時指示をいただきながら、調理をさせていただきました。
こちらが出来上がった「あいまぜ」です。
いよいよ、次は試食です。
珠洲市健康増進センター所長の三上さんと、管理栄養士の宮根さんに食べていただきました。
どちらの料理も「とてもおいしい」「珠洲市の住民の方の口にも合うと思う」とコメントいただきました。お墨付きをいただけて、ほっと一安心。思わず笑顔がこぼれます。
気付きもたくさんありました。「はす蒸し」については、電子レンジ調理は家庭では便利だけど、料理教室では蒸し器の方が効率的であること、今後災害が発生し避難所での食事を余儀なくされたときに、この「はす蒸し」はポリ袋調理(食材をポリ袋に入れて、湯煎で加熱)ができるかもしれない(宮根さん)、ということ。
「あいまぜ」については、これに似た料理はあるけれど、「あいまぜ」という名前は初めて聞いたと三上さんと宮根さん。食文化についての住民の方々と話すきっかけになればと、様々なアイデアや意見が飛び出しました。
「今珠洲市では、仮設住宅入居や子供の教育問題などから、もともと住んでいた場所を離れる人が増え、地域の繋がりが希薄になってきています。」と住民の方の置かれた状況を三上さんが伝えてくださいました。
珠洲市の住民の方々の食事支援を担ってきた管理栄養士の宮根さんは、「仮設住宅を巡回していると、調理環境が変わってしまって料理をする気にならないとか、出来合いのおかずを買うことが多くなったなどの話を聞きます。地域の皆さんが集まって料理をする機会を設け、作ることの楽しさ、地のもの、旬のものを味わう楽しさを思い出してくれたら」と想いを語ってくださいました。
珠洲市の現状や日常の食における課題を知り、改めて自分たちにできることは何かを考え、自らの想いを語るチームの皆さん。料理教室の実現に向けてお話が弾みました。
2025年9月、珠洲市にて「うま味調味料活用!郷土料理コンテスト」2024年度応募レシピである「はす蒸し」と「あいまぜ」を作る料理教室の開催が決定しました! 講師はコンテスト応募チームが務め、珠洲市健康増進センターとの協働による開催となります。
珠洲市の方々とどのような交流が生まれるのか、今から楽しみです。この記事をご覧になった皆さんも、ぜひ応援してくださいね。
料理教室の様子は、開催後に弊協会WEBサイトにてご紹介いたします。
NHK出版デジタルマガジンに本取り組みが紹介されましたので是非ご覧ください。
NHK出版デジタルマガジンCopyright(c)日本うま味調味料協会.All Rights Reserved.